| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-176 (Poster presentation)
洪水は重要な撹乱レジームの一つであり、その頻度と強度は今後増大すると予想される。しかし、洪水撹乱に関する既存研究の多くは単一の洪水イベントに焦点を当てており、強度と頻度が異なる洪水が繰り返し発生する条件下でも、抵抗性と回復力を規定する機構が維持されるのかは不確実である。そこで本研究では、日本(神奈川・東京)の都市河川氾濫原において、通常時には冠水しない砂質基質上に設置した永久プロットで植生調査を複数回実施した。2025年5月から10月にかけて、植物群集を毎月調査することに加え、各洪水イベントが生じた後3日以内にも調査を行った。種ごとの被度と草丈を記録し、それらを組み合わせて地上部バイオマスの代理指標とした。抵抗性と回復力は、洪水直前・洪水直後・洪水後の一定期間経過後に測定したバイオマスに基づいて定量化した。群集加重平均(CWM)に基づく葉形質、種多様性(α多様性・β多様性)、洪水強度・洪水頻度、つる植物被覆率が抵抗性および回復力の変動を説明するかを、線形混合効果モデルにより評価した。
その結果、抵抗性は洪水強度が高いほど増加し、強い洪水ほど機能的組成によって規定される度合いが大きかった。具体的には、資源保存型形質(高い葉乾物含有量:LDMC)に支配された群集は、強度の高い洪水下でより高い抵抗性を示し、LDMC-CWMと洪水強度の間に有意な交互作用が認められた。一方、短期的な回復力は機能形質や種多様性では説明されなかった。代わりに、つる植物被覆率が回復力と強い負の関連を示し、群集構造が洪水後のバイオマス回復を制約していることが示唆された。α多様性・β多様性はいずれも、抵抗性・回復力のどちらに対しても効果が支持されなかった。以上より、複数回の洪水条件下では、抵抗性は「形質×強度」の相互作用によって規定される一方、回復力は多様性や機能形質ではなく群集構造によって制約されるという、非対称な安定性パターンが示された。