| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-177 (Poster presentation)
つる植物は、自身で身体を支えることなく他の樹木等に登攀して成長するユニークな植物である。つる植物には、樹木の幹を這って登攀する根張り型と、巻きながら登攀する巻き付き型などの登攀タイプがある。また、その分布は登攀タイプによっても異なることが分かっている。多くの既存研究で、つる植物の分布は気温や降水量などの気候要素から説明されてきたが、これら気候要素の急激な変化を生じる標高がつる植物の分布に及ぼす影響に焦点を当てた研究は殆どない。本発表では、日本の温帯域に位置する筑波山(標高877m)における標高に着目したつる植物の分布パターンの把握とその要因の解明を目的として実施した研究成果について報告する。
本研究は、2025年5月から10月にかけて筑波山の全9本の林道で実施した。全林道の登山口から標高50 mごとに林道の左右に 20 m×5 mの区画を1か所ずつ設置し、区画内の地上高 1.3 mの胸高直径(DBH)5 cm 以上の樹木と、同1 cm 以上のつる植物を調査した。各区画で、調査対象のDBHと種名を記録し、環境データとして土壌水分、林道の幅および区画の傾斜を計測した。その結果、全体で計14種、計219個体のつる植物が確認された。筑波山では、根張り型ではテイカカズラとイワガラミが、巻き付き型ではフジとサルナシが優占していた。つる植物群集全体の分布、および登攀様式ごとの分布において、標高に伴う一定の傾向は認められなかったが、中標高帯で個体数の急増が確認された。また種ごとの分布については、同一の登攀タイプ内において、標高に伴う種の入れ替わりが見られた。
以上から、筑波山では、種レベルでみると標高の影響は見られたものの、つる植物群集や登攀タイプでみると標高の明瞭な影響は見られなかった。この理由として、筑波山では標高や方位に起因する気候要素の変化に加えて、多様な履歴を有する人工林と二次林が点在することが考えられた。