| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-178 (Poster presentation)
日光国立公園菖蒲ヶ浜スキー場跡地では、ニホンジカによる強い採食圧下で、オオハンゴンソウ(Rudbeckia laciniata L.)とシバ類(Zoysia spp.)が大規模な群落を形成している。特に、オオハンゴンソウは特定外来生物に指定されており、国立公園における生態系や景観保全の観点から、管理上の重大な懸念事項となっているため、行政や民間団体、企業等による駆除活動が行われている。とりわけ菖蒲ヶ浜スキー場跡地は、日光地区において最大級のオオハンゴンソウ群落が確認されている。そこで本研究は、当該地におけるこれら両種の草本群落の分布状況を明らかにするとともに、今後の植生遷移や自然再生の在り方を検討することを目的とした。
Web-GISを実装したアプリケーションを用いて20mメッシュで両種を対象とした現地調査を行うとともに、ArcGIS Proによる空間解析を行った。この結果、空間的関連(p=0.07, 90% Confidence)を基に空間構造が検出され、調査対象地は「シバ類優勢の東部(負の線形相関)」「オオハンゴンソウ優勢の西部(凹型)」「両者共存の北部」の三つのゾーンに区分された。
東部は低標高・緩斜面で良好な日照条件によりシバ類が密生し、サッチ層がオオハンゴンソウの侵入を物理的に阻止するとともに、シカの選択的採食によりシバ類が優占している。西部は高標高・急斜面で、オオハンゴンソウの旺盛な生育と被陰形成、シカ不食性によりシバ類を抑圧し、単独優占群落を形成する。北部は樹冠高が高く森林被陰がシバ類を抑制する一方、南向き斜面の影響で両種の競争が拮抗し共存状態が維持されている。
両種は陽性植物として森林化進行で消失するが、スキー場跡地の原状回復未実施とシカ採食圧による植生遷移停滞が、オオハンゴンソウ群落の長期存続を助長している。人為による駆除活動を森林再生につなげる方策の検討とともに、行政主導の自然再生事業の再開とシカ密度管理が今後の課題である。