| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-179 (Poster presentation)
人工的な生態系である都市では多数の動植物が生息しており, 都市生態系の理解には, 都市独特の環境変化が生物相の変化に与える影響を解明する必要がある. 例えば, 都市特有のアスファルトやコンクリート等不浸透面の優占は, 劇的な地温上昇と乾燥化を引き起こす. これまで樹木や草本を対象に, 都市化と植物群集の関係が研究されてきたが, 一貫した結果は得られていない. 一方で, コケ植物は地表面の地温や乾燥の影響を直接的に受け, またクチクラ層をほぼ持たないことから環境の変化に脆弱な指標生物とされる. したがって, コケ植物に注目することで, 都市化が植物に与える影響のより高精度・詳細な理解が期待される. そこで本研究では, 都市化に伴うコケ群集の分布の変化を調査し, その規定要因を景観レベルで明らかにすることを目的としている.
東京駅から奥多摩駅・武蔵五日市駅にかけての中央線・青梅線・五日市線の駅周辺10地点125カ所の郵便ポスト直下のコケ群集を調査した. ポスト直下にてコドラート調査を行い, 1 m×1 m四方内のコケ植物の種, 20 cm×20 cm四方内(2カ所/プロット)のコケ植物全体・種ごとの被度を測定した. 種の同定はその場では困難なため, 一部を採取し, 実験室にて光学顕微鏡を使用した. 一般化線形混合モデル(GLMM)を用い, 被度または種を応答変数, 調査プロットと基質を説明変数, 反復をランダム効果として解析を行った.
現在, 東京駅, 武蔵五日市駅, 高尾駅周辺の3地点38カ所から採取したコケ群集の同定が終わっており、11科12属20種が見つかった. コケ群集のShannon指数とChao 1指数は, 高尾駅のコケ群集において東京駅と武蔵五日市駅より有意に大きかった.今後は, 同定を進めるとともに調査地点をさらに増やし, GISを用いて開空度や乾燥, 夜間光等コケ群集の分布に影響する規定要因を解析する. そして, 栽培試験でその規定要因がコケ群集の生育に与える影響を検証する予定である.