| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-180 (Poster presentation)
近年、都市部では急速な土地改変や緑地の減少および植生構造の単純化により、生物多様性の喪失が進行している。都市緑地はさまざまな生物の生息地としても機能していることから、その多様性保全機能を適切に評価することが求められている。日本の都市緑地において、神社仏閣に付帯する緑地や大名屋敷などの歴史的背景を持ちつつ公園として維持されてきた緑地(以下、歴史公園)は数百年にわたり整地などの大規模な攪乱を受けずに維持されてきたSacred Natural Sites「自然の聖地」として位置づけられる。これらの緑地では伝統的な管理や歴史的な経緯によって、現在でも多層的な樹木群落が維持されている可能性があるが、こうした可能性を長期かつ定量的に検証した研究は少ない。
そこで本研究では、東京都心の緑地において多数の樹木群落の約30年間の推移を定量化し、都市部において神社仏閣や歴史公園という「自然の聖地」が有する樹木群落の保全機能を評価した。東京都文京区の神社仏閣、歴史公園、都市公園という3つの緑地タイプにおいて計30地点の樹林を対象に、1993年および2025年の4月から10月に以下の野外調査を実施した。各地点において、半径20mの円形プロット内に出現する樹木の種名と本数を記録し、樹高に基づき低木(2m以下)、亜高木(2〜8m)、高木(8m以上)に区分して階層構造を把握した。得られたデータを用いて、緑地タイプ間および調査年次間での樹木種数、個体数、階層構造の変化について比較・解析した。
全調査地で確認された樹木種数は、1993年では266種、2025年では211種であり、各調査地の樹木群落構造は約30年の間に一部変化したものの、30地点の樹林の群落構造は両年とも概ね2~3つの緑地タイプに特徴づけられた。緑地タイプ間での植生の変化の度合いは樹木の階層ごとに異なった。本発表ではこれらの解析結果を元に、日本の都市部に多数点在する「自然の聖地」が樹木の多様性維持に果たす役割を議論する。