| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-181 (Poster presentation)
一次遷移の進行に伴い土壌有機物の量や質は変化し、それに伴って炭素(C)、窒素(N)、リン(P)の循環において重要な役割を担っている土壌微生物群集も変化することが知られている。しかし、土壌有機物の質(中でも土壌C:N:P比)の変化に対して微生物群集がどのように応答するか、その結果、バイオマスC:N:P比がどう変化するのかは未だ十分に理解されていない。また、土壌有機物と微生物を仲介する要因として、有機物分解のために微生物が分泌する細胞外酵素が重要であると考えられた。そこで本研究では、富士山火山荒原の一次遷移に伴う土壌環境の変化に対する、微生物バイオマス、細胞外酵素活性のC:N:P比の応答と、その三者間の関係性を明らかにすることを目的とした。
富士山火山荒原の5つの遷移段階から土壌を採取し、易分解性C、N、Pとして、熱水抽出炭素、無機態窒素、無機態リン酸を測定した。また、C、N、Pの獲得に関わる酵素の活性を測定した。さらにクロロホルム燻蒸抽出法により、微生物バイオマスC、N、Pを定量した。以上のデータから、土壌―細胞外酵素―微生物バイオマスのC:N:P比の関係を解析した。
一次遷移に伴い土壌中のC、Nは増加したがPは変化せず、結果として土壌のC:N、C:P比は増加し、環境中のN、Pは相対的に不足していった。この間、酵素活性C:N、C:P比は低下しており、これは、不足したN、Pを補うために微生物がN、P獲得酵素の分泌割合を増加させたためだと考えられた。しかし、微生物バイオマスC:N、C:P比は遷移に伴って増加しており、酵素活性比の変化ではこの結果を説明できなかった。これは、炭素制限状態である富士山火山荒原ではN、P獲得酵素が微生物のC獲得にも作用しているためだと考えられた。また、遷移に伴う微生物バイオマスのC:N、C:P比増加には、微生物群集構造の変化が寄与している可能性も考えられた。