| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-182 (Poster presentation)
本研究では、同年代に成立し撹乱の規模が異なる八ヶ岳東麓の冷温帯林の樹種構成と成立年代の解明を行なった。林分構造の比較検証と撹乱履歴をもとにした森林の成立過程の解明により、林分構造の変化および安定性を決定するメカニズムを明らかにすることを目的とした。
長野県と山梨県のミズナラ二次林、若齢ミズナラ−ウラジロモミ林(以下若齢林)、ウラジロモミ−ミズナラ混交林(以下混交林) の3カ所で、2024年に胸高周囲長15 cm以上の樹木を対象にDBHと樹高を測定し、2009年のデータと比較した。優占樹種から樹齢解析用の試料を採取した。
2024年の測定データでは、ミズナラ二次林のサイズ分布は逆J字型分布、若齢林では集中的で均一な分布、混交林では幅広い分布を示した。混交林ではD-H曲線が飽和に達しつつあるが、他2林分では上限樹高に至っていなかった。ミズナラとヤエガワカンバの樹齢は調査地間の差異がなく、ウラジロモミは混交林で70-90年生と最も高齢であった。ミズナラ二次林では伐採などによる大規模な撹乱が影響し、ミズナラとヤエガワカンバが優占していたと考えられる。若齢林ではミズナラ二次林よりも撹乱の影響が小さく、ウラジロモミが混交し始めた段階と推察される。
2009年のデータと比較すると、ミズナラ二次林と若齢林のサイズ分布は有意に右にシフトしており、混交林も同様の傾向にあった。最大樹高は全体で4-8 m増加した。ミズナラ二次林ではこの期間にミズナラとヤエガワカンバが全体の樹高成長に寄与した。一方、混交林では2009年時点でウラジロモミが上層を形成しており、さらに15年間でミズナラが林冠に達し始めていた。この期間に小~中程度の撹乱を受けて安定的に更新していたことが示唆された。
以上の結果から、撹乱の強度や頻度により、現在のサイズ分布やD-H曲線から反映される林分構造と種組成、そして優占種の樹齢に違いが生じたことで、林分の発達段階の差異が生じたと結論した。