| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-185 (Poster presentation)
農業地域の拡大や集約化によって、中大型哺乳類は負の影響を受ける。一方で、彼らの中には採餌のためにしばしば農地を利用する種もいる。農地を利用する種にとっては、栽培する作物の種類や人工構造物に応じて局所環境が異なると獲得できる餌資源も異なると考えられる。また、農事暦による餌資源の変化も餌資源の獲得に影響を与えると考えられる。本研究ではアカギツネとタヌキを対象に、水田と果樹園において、農事暦と局所環境は彼らの農地利用に影響を与えるかどうかを検証した。
調査は山形県鶴岡市で行った。2025年4月から11月に水田(農道、畦、水路、水田内)17サイトと果樹園(カキ、リンゴ、廃棄場、クリ)6サイトに自動撮影カメラを設置し、動物を撮影した。撮影数と期間区分(2か月単位)及び局所環境との関係を明らかにするために、種ごとに一般化線形混合モデル(GLMM)を構築した。また、動物質の餌資源だと考えられるげっ歯類、昆虫類、カエル類、タニシの資源量調査も行った。
調査の結果、アカギツネは1299回、タヌキは154回撮影された。GLMMの結果、農道や畦・水路の線形構造物で両種ともに撮影数が有意に多かった。両種が採餌や移動を効率化するために線形構造物を多く利用したと考えられる。また、カキ・リンゴ・廃棄エリアにおいて両種とも収穫期に撮影数が増加した。収穫期は落下果実や廃棄果実を大量に利用でき、採餌効率が上がるためと考えられる。一方で、両種の撮影数と動物質の餌資源量は同調しなかった。
本研究はアカギツネとタヌキが農地において農事暦と局所環境の影響を部分的に受けることを明らかにした。本研究で実施したような中型食肉目による農地利用の実態解明は、人と野生動物の適切な関係構築を目指した環境管理に貢献すると期待される。