| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-186 (Poster presentation)
野生動物のロードキルは、車の交通経路と動物の移動経路が交差する地点で発生する衝突事故であり、その分布は周辺の景観や道路の構造に強く依存すると考えられる。しかし、連続した道路空間の中で、ロードキルが時間的・空間的に集中するメカニズムについては十分に検討されていない。本研究は、愛知県新城市の主要道路を対象に、土地利用や道路構造といった空間的要因と、出現時間や時期などの時間的要因が、ロードキル発生に与える影響を明らかにすることを目的とした。新城市の「シカ衝突事故ハザードマップ」を基盤に、道路上に500m間隔の調査点を配置し、半径250mのバッファ内のロードキルの発生件数とその日時、バッファを占める土地要素とその面積、および道路の長さと柵の長さを算出した。一般化線形混合モデル(GLMM)を用いた。解析の結果、農用地面積が大きい地点ではロードキル件数が増加した一方、森林面積が大きい地点では発生が減少する傾向が見られた。道路構造においては、カーブの長さやそれと相関する一部の周辺環境が影響を及ぼしていたが、防護柵の長さについては明確な影響が認められなかった。時間的要因においてでは、収穫期にあたる秋季や、シカの活動が活発化する日の入り前後に発生が増加した。以上のことから、シカのロードキル発生には周囲の景観、道路構造、季節性および日周性が複合的に関与していることが明らかとなった。ロードキル対策には、単に道路構造や土地景観を独立に改善するのでなく、運転者の行動特性や地域住民の道路利用パターン、シカの行動生態を理解することが重要である。本研究は、人間と野生動物の双方の行動を踏まえた統合的な対策の立案に向けた基礎的知見を提供するものである。