| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-188 (Poster presentation)
アリ類は移動性が低く真社会性昆虫であるため、環境指標生物として有用とされるが、群集と植生環境との関係に着目した研究は少ない。そこで本研究の目的は上伊那地域の異なる植生環境におけるアリ類群集の種組成と構造を明らかにし、環境指標性について検討することとした。調査地は信州大学農学部(構内)、社叢林と平地林は各2箇所とした。構内は広葉樹林と針葉樹林、草地等がモザイク状に存在した。5調査地内に広葉樹林9区、針葉樹林13区、混交林19区、リタ―無3区の計44区が設置された。2カ年にわたり、アリ類調査として見つけ取り法・方形枠法、植生調査として木本層・草本層・リタ―層の高さと被度の記録が実施された。解析はpython(3.14.0)、R(4.3.0)を使用した。
アリ類は計3亜科32種、RL種はトゲアリ等3種が出現した。地区ごとの出現種数と多様度指数H´の平均値および標準偏差は、各々8.48±2.45種、1.95±0.30だった。構内の出現種数は31種で、構内でのみミカドオオアリ等9種が出現し、社叢林のみでキイロケアリが出現した。広葉樹と混交林(n=28)でチャイロムネボソアリ(p<0.01)、針葉樹林(n=13)でアシナガアリ(p<0.01)が有意に出現した。植生環境について、構内における草本層の被度は社叢林や平地林と比較して有意に高かった(p<0.05)。広葉樹林の群集のH´は混交林より高かった(p<0.05)。
構内は奥山に近く最も面積が大きい調査地であり、異なる植生がモザイク状に存在するため、他で出現しない9種が生息すると考えられた。また構内では広葉樹林の林床に草本が優占し、林地と隣接するため、アリ類群集の種多様性が高かったと示唆された。チャイロムネボソアリの出現した10地区全てに広葉樹のリタ―が存在し、堅果やリタ―層で確認されたことから、広葉樹と関係があることが示唆された。アシナガアリは針葉樹林、特に社叢林で集中して出現しており、森林の林齢を指標する可能性がある。