| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-189 (Poster presentation)
中央アジア・キジルクム砂漠は降水量の少ない乾燥地域であり、春の限られた期間に生育する草本植物と主に春と秋に活性化するArtemisia diffusaなどの低木から構成された乾性草原が広く分布している。一方で、被圧地下水が地表に自噴する湧水点周辺には、地下水に依存した草本からなる湿性草原やTamarix hispidaなどの木本群落が局所的に形成されており、春から秋にかけての比較的長期間活性を保っている。これら両草原は異なる空間分布をしているが、植生の低い被覆率や大きい季節変動など乾燥地植生特有の性質により、分布を把握することは容易ではない。そこで本研究では、キジルクム砂漠南東部キジルケセク地区の約20km×16kmの領域を対象とし、秋の現地調査によって確認された植生分布を基準として、衛星画像を用いて地表面の状態を可視化・分析できるクラウドベースの地理空間解析プラットフォームであるGoogle Earth Engineを用いて湿性草原および乾性草原の分布把握を行うことを目的とした。光学衛星Sentinel-2の表面反射率データから植生の有無や活性度を表す正規化植生指数(Normalized Difference Vegetation Index:NDVI)を算出し、2024年9月の秋の現地調査に基づく教師データを用いて湿性草原および乾性草原それぞれの下限値を植生分類の閾値として決定し、秋と春それぞれの複数日に適用した。その結果、秋において湿性草原は分布位置および形状が期間を通じてほぼ一定であり、安定して抽出することができたのに対し、乾性草原は分布域の大枠は維持されたものの内部でのNDVIの高低分布が変化した。秋季に乾性草原と判定された領域において春季に一時的なNDVIの上昇がみられたことから、短命草本の出現を捕捉できた可能性が示唆された。以上より、秋の現地調査に基づいて決定した植生指標の閾値を用いることで、乾燥地における湿性草原および乾性草原の分布を季節を通じて把握することができた。