| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-191 (Poster presentation)
ツキノワグマは、本州および四国に生息する森林性哺乳類であるが、四国では個体数が約20頭にとどまり、絶滅リスクが高い状態が続いている。本研究では、クマの生息において重要な餌資源である植生に着目し、四国における植生の分布および空間的連結性を分析することで、潜在的な生息可能性と生息環境における課題を明らかにすることを目的とした。
まず、環境省植生図とツキノワグマのGPS位置データを重ね合わせることで、ブナ科落葉広葉樹自然林やブナ科落葉広葉樹二次林などの適正植生を特定し、それらをコアハビタットと見なしてバッファリングを行った。25mから200mまで複数のバッファ距離条件下で適正植生パッチの接続状況を比較した結果、50m前後の距離においてパッチの連結性が最も効果的に向上することが明らかとなった。
さらに、65km²以上の面積を持つ連結パッチを抽出した結果、ツキノワグマが生息可能とされる最小面積を満たす生息地が四国内に複数存在することを確認した。特に、パッチの面積が小規模かつ孤立している傾向はあるものの、50mバッファによる連結を考慮することで、広範囲にわたる潜在的な生息地の存在が示唆された。
今後は、今回明らかとなった最適連結距離である50mを基準として、季節ごとの空間利用の変化や性別による生息地選好の違いに加え、行動パターン(定着・移動・採食行動など)の違いにも着目した比較分析を行う予定である。これにより、ツキノワグマが四国内でどのように生息空間を活用しているのかをより詳細に把握し、行動特性に応じた保全上の重点区域を明確にすることが可能となる。また、これらの知見は将来的な再導入の適地評価や、生息地管理・モニタリング体制の構築にも資することが期待される。多面的な解析を通じて、ツキノワグマの保全および個体群回復に向けた科学的根拠を提供することを目指す。