| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-192 (Poster presentation)
森林の分断化は生物多様性保全効果に悪影響を及ぼす。生物多様性の回復には,人工林より生物多様性の高い天然林同士が再接続する現象「天然林の非分断化」が重要である。しかし,既往研究では人工林と天然林を一括した森林の非分断化を評価しており,天然林に着目していない。日本では,戦後の拡大造林により天然林が人工林へ転換され,天然林が分断した。一方近年では,再造林放棄に伴う天然林回復が報告されており,人工林から天然林への転換によって天然林が非分断化している可能性がある。本研究では日本全土を対象に1985年から2022年の天然林の非分断化状況とその要因を解析した。天然林には土地被覆マップの広葉樹林クラスを用いた。天然林に対して5種類の景観指数を毎年計算し,各指数の増減傾向をマンケンドール検定により評価した。これらの結果を総合的に解釈することで,天然林の景観構造変化を検討した。得られた景観指数の1985年から2022年への変化量を利用して,一般化線形モデルにより天然林の非分断化要因を求めた。その結果,日本では1985年からの37年間において天然林の合計パッチ面積,平均パッチサイズ,隣接確率,合計コア面積が有意に増加し,天然林が非分断化したと言える。一方で,2000年以降パッチ数が増加し孤立天然林の形成が観測された。孤立林は時間の経過と共に林縁,森林内部へと遷移することが報告されており,孤立林の形成は非分断化過程の一部だと考えられる。本研究で観測された孤立天然林は凝集して存在するため,今後融合し更なる非分断化が期待される。回帰分析の結果,天然林の非分断化には皆伐が強い正の影響を及ぼした。また,林業作業の難しい高標高・急傾斜地や人口密度が低い場所で天然林が非分断化しやすいことが明らかになった。以上から,皆伐を主因とする人工林から天然林への転換により,奥山の林業不適地で天然林の非分断化が進行したと結論づけた。