| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-195  (Poster presentation)

農業活動が生態系機能の空間分布に与える影響の定量的解析【A】
Quantitative analysis of the effects of agricultural activities on the spatial distribution of ecosystem functions【A】

*福谷匠哉, 村尾祐真, 秦陽咲, 篠原百絵(関西学院大学)
*Takuya FUKUTANI, Yuma MURAO, Hisaki HATA, Momoe SHINOHARA(Kwansei Gakuin Univ.)

農業は食料生産の大部分を担うだけではなく、里山をはじめとする主要な景観の構成要素の一つであり人と自然のかかわりの理解に重要である。近年では、収量を追求するあまり過度な農薬・化学肥料の使用による、農作業が生態系に与える負の影響が注目されてきた。一方、特に都市部では農地が数少ない自然環境として機能しており、生物多様性の向上に寄与していると考えられる。一方で、こうした知見の多くは特定の分類群に偏っており、農業活動が地域生態系に与える影響について包括的に議論した研究は限られている。情報科学は、こうした個別の事象から全体に与える影響を議論する際に有効なアプローチの一つであり、生命科学領域においてもオミクス解析などの分野で活用されてきた。本研究では、農業活動が生態系に与える影響の定量的な評価方法の確立を目的に、トランスクリプトーム解析を模して周囲に農地が存在することにより存在確率が変動する生物相とその生態系の中での機能を解析した。地球規模生物多様性情報機構 (GBIF) から取得した植物・昆虫・鳥類・菌類の生物分布データに対して、土地利用メッシュデータを利用して観測地点周囲2 km以内に農地が存在するかを判定し、一般化線形モデルにより農地の効果を検定した。その結果、存在が変動した属 (DAG: Differently Abundant Genera) として約2500属が検出され、その内訳は植物で最も多く次いで昆虫、菌類、鳥類の順であった。DAGの中には、農地によって存在確率が減少した属だけでなく、増加した属も含まれた。この結果は、農業活動が生態系に対して一様に悪影響をもたらすわけではなく、正の効果ももたらすという仮説を支持している。本発表では、このモデルを基盤に、これらの属が生態系の中で果たしている機能について、大規模言語モデルを利用して推定した結果も踏まえ、農業活動と生物多様性の関係について包括的に議論する。


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