| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-196 (Poster presentation)
世界農業遺産地域である大崎耕土は、「居久根」と呼ばれる屋敷林が水田地帯に多数点在するという特徴を持つ。居久根は、土着天敵の避難場所や代替生息地となることでその周辺水田において害虫被害を軽減することが期待される。そこで本研究は、大崎耕土において、①クモ類が多い水田ほど斑点米被害率が低いか、②居久根や水路に近い水田ほどクモ類の個体数が多いか、③水田が生息地として機能しにくい時期に居久根や水路がクモ類の代替生息地として機能するか、の3点を検証した.調査は、2023年-2024年の7月に水田14圃場25地点で行い、イネ上方部の害虫およびクモ類をスイーピング法により、下方部の節足動物類を水面に設置した粘着トラップにより採集した。さらに2025年5月に水田6圃場とその周辺環境の合計28地点を対象にスイーピング法および見取り法によりクモ類を採集した。
調査対象水田では斑点米被害が発生しており、害虫としてアカスジカスミカメが、その潜在的な天敵としてアシナガグモ属やキバラコモリグモ等が観察された。斑点米被害率は水田内の雑草被度が高いほど増加する一方、アシナガグモ属の個体数が多い水田では低下する傾向が認められた。また、アシナガグモ属は居久根に近い水田で多く生息することが確認された。さらに、5月の湛水直後の時期でも、居久根やその周辺においてアシナガグモ属が多く生息する傾向が示された。以上の結果から、居久根は、害虫の土着天敵であるアシナガグモ属の代替生息地として機能し、周辺水田において害虫被害防除効果を促進している可能性が示唆された。居久根のような1軒あたり数百から数千㎡程度の小規模な樹林帯でも土着天敵の代替生息地として機能したことから、本地域において斑点米被害を抑制するためには、水田内の雑草管理に加え、水田周辺に位置するランドスケープ要素を適切に保全・管理し、土着天敵の生息環境を維持・強化することが有効であると考えられる。