| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-201 (Poster presentation)
水田が優占する農地景観は自然湿地の代替生息地として重要とされるが、近年、圃場整備などによる生物多様性の減少が指摘されている。トウキョウダルマガエルは水田景観を主な生息地とし、サシバなど農地性高次捕食者の重要な餌資源とされるが、分布域の一部では絶滅危惧種に指定されるなど、減少が懸念されている。本種は一年を通し水田周辺を利用するとされ、成体は農業活動などの人為撹乱を避けるため水田や他の農地が連続する景観が重要と考えられる。一方、卵から上陸までの幼生は圃場の水中で生育することから、圃場の水量など局所的な条件が重要と考えられる。これら広域の景観と局所の条件両方を生活史全体を通して比較、評価した研究は限られている。そこで本研究では、本種の成体期と幼生期のそれぞれに影響する環境要因を推定し、本種の生息地保全への提言を目指した。
調査地は関東北部の丘陵地に谷津田が分布する6km四方の景観で、水系沿いに調査ブロックを14設置し、各ブロックに3つずつ調査プロットを配置した。プロット内の水田の畔を1km/hで歩きながら確認したカエルを地図上に記録した。調査は、産卵期の成体の分布調査を田植えの終わった直後の2025年5月末、上陸直後の幼体の分布調査を水田の中干しが始まって7-10日後の6月末に実施した。畔を解析単位とし、記録された成体数と幼体数それぞれを応答変数としたGLMMを用い、モデル選択によって重要な説明変数を探索した。
その結果、産卵期の成体個体数は周囲50m内の水田と畑地が広く、コンクリート水路が少ないほど多かった。成体1個体あたりの幼体個体数は6月末に水の多い水田で多かった。以上からトウキョウダルマガエルの生息地保全には、水田と畑地が連続する景観で成体が移動可能な形状の水路を残し、かつ幼生の上陸終了まで中干しを遅らせることが有効だと考えられた。