| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-203  (Poster presentation)

都市化はツユクサの種子休眠を増大させるか?【A】
Does urbanization increase seed dormancy in Commelina communis?【A】

*薮本大樹, 内海俊介(北海道大学)
*Hiroki YABUMOTO, Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.)

 近年、都市化に対する生物の適応が注目されている。従来の研究では、都市への適応は、都市の環境ストレスに対する遺伝的進化や表現型可塑性によって説明されてきた。例えば、都市の高温ストレスに対する、植物の進化的応答や可塑的応答が知られる。しかし、都市特有の頻繁かつ致死的な攪乱は、繁殖機会が一度きりの一年生草本にとって局所絶滅の大きなリスクをもたらすため、環境ストレスに対する直接的な応答による適応だけでは不十分であると考えられる。すなわち、都市環境では、その不確実な環境変動(突然の草刈りや旱魃、土地利用改変による生息地の消失)に対して、リスクを分散し、長期的な適応度を最大化する戦略であるベットヘッジング(賭けの分散)の重要性がより高いと予測される。しかし、ベットヘッジングは野外における実証研究が乏しく、また、都市適応の文脈で議論されたこともない。特に、短期的に形質を変化させる戦略である表現型可塑性とベットヘッジングがどのように関わり(協働やトレードオフなど)、環境変動性に対して進化しているのかが未解明である。
 本研究では、都市を「時空間的に劇的な変動を伴う環境」と捉え、表現型可塑性とリスク分散形質の集団間変異を検証した。札幌圏の都市中心部から郊外(農地・林野)にかけて、一年生草本ツユクサ(Commelina communis)の種子を採取した。これらを異なる温度条件下で培養し、発芽率と要した日数を計測した。種子発芽は、温度などに対する可塑的応答であると同時に、休眠することで発芽時期をずらしリスク分散的に機能する形質である。よって、都市─農村間における発芽率という実験系は、表現型可塑性および潜在的なベットヘッジング形質の指標として、同時に機能し得る。本発表では、この実験系を用いて定量化された二つの戦略から、変動環境における都市植物の生存戦略について考察する。


日本生態学会