| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-205  (Poster presentation)

チシマザサ地下茎の伸長と先端枯死からの再生~地下茎内の糖分布に着目して~【A】
Rhizome elongation and regeneration after apical death in Sasa kurilensis:focusing on within-rhizome sugar distribution【A】

*柴田修佑, 吉村謙一(山形大学)
*Shu SHIBATA, Kenichi YOSHIMURA(Yamagata Univ.)

ササの拡大は林業上の課題として指摘されることが多々あり、ササの個体拡大メカニズムの研究が必要となる。ササの拡大は主として地下茎による栄養繁殖に依存する。クローナル植物において葉で生産された非構造性炭水化物(NSCs)は地下茎で輸送され先端の伸長に用いられる。また、NSCsは先端伸長だけでなく輸送されるまでの間に呼吸消費されることから、地下茎の個体内におけるNSCsの輸送と消費の観点からササの伸長様式について明らかにする必要がある。そこで本研究ではササを掘り出して地下茎内のNSCsおよび呼吸の分布からNSCsの動態を把握することで地下茎伸長に及ぼす影響を明らかにすることを試みた。多雪地の林床を優占するチシマザサ(Sasa kurilensis)を対象とした。チシマザサ地下茎(n=20)を露出させたのちに、地下茎を10cm ごとに区切りそのサンプルにおけるササの呼吸(CO2 濃度変化量)と地下茎の形態(地上部や分枝の有無など)を測定した。地下茎サンプルおよび葉を持ち帰り、それらを乾燥させたのちに重量を計測した。その後サンプルを粉砕して糖分析を行い、サンプル内NSCsを測定した。ササの掘り取りの結果、1個体のサイズは2m~14mであり、地下茎内の枯死と分断を繰り返しながら伸長していた。また、先端地下茎が枯死している個体もしばしば見られ、そのような個体では先端近くの節から地下茎を分枝することで地下茎伸長していた。呼吸速度の地下茎内分布をみると先端部では高く、地下茎後端部では低いことが分かり、糖分布はその逆の傾向を示した。地上稈で生産されたNSCsは先端部で消費され、後端部では消費されず貯留することで先端部での伸長と後端部での貯蓄実現していることが分かった。ササはジェネットをクローナルフラグメントに分割して生育することが知られているが、本研究の結果からクローナルフラグメント内で後端部はNSCs貯蓄、先端部ではNSCsを消費することにより、個体の維持と伸長を行っていることが示唆される。


日本生態学会