| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-206  (Poster presentation)

屋久島におけるサツキの形態および遺伝的構造【A】
Morphological variation and genetic structure of Rhododendron indicum in Yakushima Island【A】

*遠藤翼(新潟大学), 阿部晴恵(新潟大学), 川西基博(鹿児島大学), 崎尾均(新潟大学)
*Tsubasa ENDO(Niigata Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.), Motohiro KAWANISHI(Kagoshima Univ.), Hitoshi SAKIO(Niigata Univ.)

植物は同一種内においても、環境応答による表現的可塑性や遺伝構造によって個体間や集団間で形態の変異を示すことがある。特に島嶼地域では大陸とは異なる種構成や生物間相互作用系のもとで、このような傾向が顕著になることが多い。本研究の対象種であるツツジ科ツツジ属の半常緑低木であるサツキ(Rhododendron indicum (L.)Sweet)は分布の中心地である本州から遠く離れた屋久島にも分布している。サツキは一般に渓流環境に生育しているが、先行研究により屋久島のサツキは山頂部にも生育していること、遺伝的に固有で貴重な集団であることが明らかになっている。そのため、屋久島の渓流域と山頂部に生育するサツキの葉形態と遺伝構造を比較し、環境適応と島嶼集団の進化的意義を検討した。
葉形態は長径、短径、厚さ、葉柄の4項目を測定し、立地間での葉形態の比較を行った。採取地点の立地については渓流域と山頂部のなかで細分類を行った。多重比較[査読者11.1]と主成分分析を実施した結果、長径は、渓流域の全集団と山頂部の全体集団との間で有意差があり、山頂部では小型化していた。葉厚は、一部の集団を除き山頂部集団の方が渓流域集団より厚い傾向を示した。一方で、渓流域に属する中洲集団は全集団の中で最も葉が厚く、他集団との間に有意差が認められた。山頂部集団のうち尾根集団は、他の山頂部集団と比較して有意に葉が薄かった。MIG-seq法によるAdmixture解析の結果、サツキ集団は2つのクラスターに分けられたが、渓流域と山頂部の間で対応する遺伝的分化は認められなかった。これらの結果は、葉形態の立地間差が遺伝的分化を伴わないことから生育環境に応じた表現型可塑性によって生じている可能性を示唆するが、この結論には立地間の環境要因の比較や適応関連遺伝子の解析など、さらなる検討が必要である。


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