| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-207 (Poster presentation)
多くの生物は、地球の自転に伴う昼夜サイクルに適応するために内生の計時機能である概日時計を進化させてきた。概日時計の重要な特性の一つに温度補償性があり、これにより周囲の温度が変化しても周期は一定に保たれる。私たちは、この温度補償性が過補償されており、低温ほど周期が短くなるアオウキクサの系統を発見した。アオウキクサは水生の1年生短日植物であり、種子で越冬する。これまでの研究からアオウキクサの限界日長は生息地の気候と水田の灌水時期に応じて多様化しており、限界日長が長い、つまり、早咲き系統のリズム周期は短い傾向があることが分かっている。では、低温で短周期化する系統では花成はどのように変化するだろうか。今回の実験では、アオウキクサを異なる温度条件下(22℃, 25℃)に置き、異なる日長条件での花成率を調べた。その結果、概日時計の周期が短くなる22℃では、25℃と比較して花成率が上昇し、限界日長が短い、つまり早咲きの形質を示すことが確認された。また、花成経路遺伝子の発現解析において、花芽形成を促進するFT(FLOWERING LOCUS T)遺伝子のホモログが22℃では25℃に比べて夜のより早い時間から発現することが確認された。低温での発現時刻の前進は、低温での概日リズムの短周期化に対応すると考えている。更に、全国各地のアオウキクサ68系統の概日時計周期の温度応答を調べた。その結果、低温で短周期化する系統、周期の変化しない系統、一部低温で長周期化する系統が確認でき、低温に対する応答が多様であることが示された。この内、22℃と25℃で周期の変化しなかった系統では、低温で短周期化する系統に比べて、花成率の変化およびFT遺伝子の発現量変化が小さかった。以上のことからアオウキクサにおける概日時計の周期の温度依存性は花成制御に影響し、その温度応答性も多様化していることが示唆された。