| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-208  (Poster presentation)

ハルリンドウの生活史特性とその地理的変異【A】
Geographic Variation in the Life History of Gentiana thunbergii (G. Don) Griseb.【A】

*大塚なつみ(新潟大学), 石崎智美(新潟大学), 渡邊幹男(愛知教育大学), 砂押あゆみ(愛知教育大学), 神戸敏成(龍谷大学), 大原隆明(富山中央植物園), 田川一希(鳴門教育大学), 大原雅(北海道環境財団)
*Natsumi OTSUKA(Niigata Univ.), Satomi ISHIZAKI(Niigata Univ.), Mikio WATANABE(Aichi Univ. Edu.), Ayumi SUNAOSHI(Aichi Univ. Edu.), Toshinari GOUDO(Ryukoku Univ.), Takaaki OOHARA(Botanic Gardens of Toyama), Kazuki TAGAWA(Naruto Univ. Edu.), Masashi OHARA(HEF)

ハルリンドウ Gentiana thunbergii (G. Don) Griseb. は北海道から九州に広く分布する湿地性植物であり、ロゼットの状態で越冬する一年草である。地域間で遺伝的・形態的な変異があることが知られており、国内のハルリンドウは少なくとも6群に分けられる可能性が示されている。これまでの研究で、富山と愛知から個体を採取し栽培実験を行ったところ、富山の個体は20℃で容易に開花したのに対し、愛知の個体は3ヶ月4℃の低温を経験しなければ開花しなかった。これにより、ハルリンドウでは開花の春化要求性に地理的変異があることが示された。
本研究では、開花前段階における花芽形成時期および成長速度の地域間差の調査を行った。愛知県岡崎市北山湿地(春化要求性あり)、北海道月形町月ヶ湖(春化要求性なし)から採取した個体を、インキュベーター内で4℃・20℃・28℃の3条件下で栽培した。40日ごとに葉数や開花の有無を記録し個体の成長を評価した。また、120日時点で未開花の個体は、20℃へ移行し開花日を記録した。
その結果、愛知個体では28℃で、北海道個体では4℃で葉数増加が抑制された。さらに北海道個体は20℃条件下で実験開始64日目に開花したのに対し、愛知個体では120日間開花が確認されなかった。しかし4℃で120日間処理後20℃へ移行すると、両地域とも約5週間で開花した。
このことから、ハルリンドウでは、成長が促進される気温にも地域変異があることが示された。すなわち、愛知集団では夏季の高温で成長が抑制され、冬季の低温下でも花芽形成・成長が進行することで春化による休眠打破後に開花するのに対し、北海道集団では夏~秋季の温暖な時期に成長が促進されるが、低温期に成長が抑制されることで早期開花が防がれ、短い生育期間に適応した生活史をもつと考えられる。


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