| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-209 (Poster presentation)
植物の繁殖成功は、生物的・非生物的要因の相互作用により規定される。ツツジ属の多くの種では、広い分布範囲を持つことが稀であるものの、コヨウラクツツジ(Rhododendron pentandrum)は冷温帯~亜寒帯の森林に幅広く分布している。そこで、本研究では、コヨウラクツツジの繁殖特性に着目して御嶽山の標高1,800m〜2,250mにおける3地点で3年間の調査を行い、広域分布の要因を検討することを目的とした。
2023〜2025年に、標高の異なる3地点(以下:調査地①、調査地②、調査地③)で、気温、開空度、個体サイズ、開花フェノロジー、花形質、および訪花昆虫相を調査した。また、受粉様式の違いが結果率に及ぼす影響を評価するため、人工授粉実験を実施した。
本種の開花開始時期(DOY)と有効積算温度には負の相関が見られた。一方で、開花期間は個体間や個体内のシュート間によるばらつきが大きく、開花期間は全体として30~40日と長く、一定であった。主要な送粉者はオオマルハナバチ、シダクロスズメバチ、フトタカオハナアブの3種であり、表裏で異なる2色パターンの花色、内部の蜜、および複雑な花形態が送粉者を効率的に誘導していると推察された。自然受粉の結果率は調査地①で30.6%、調査地②で25.5%、調査地③で24.3%であり、調査地による差はなく、また、授粉処理による結果率にも差はなかった。一般化線形混合モデル(GLMM)解析の結果、結果率には地際直径が正の影響を、個体の最大開花数、個体群の開花ピークからのずれが負の影響を及ぼしていた。
以上より、本種は集団としての長期開花により気象変動に対するリスクを分散し、送粉者を効果的に誘引する花の内部・外部形態や資源投資の最適化といった生物・非生物的要因への適応戦略を統合することで、広域分布を可能にしていると考えられた。