| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-212 (Poster presentation)
植物の中には食害を受けた際に放出される匂い(揮発性有機化合物)を介して植物間で情報伝達を行い、食害に対する抵抗性を誘導するものがある。また、この反応が個体間で起こる場合を「植物間コミュニケーション」という。この植物間コミュニケーションには、様々な環境要因が作用していると考えられているが、未だその知見は少ない。
本研究では、海岸に生育する匍匐型と河原に生育する直立型の2タイプのカワラヨモギを対象に、匂い曝露実験および環境・生活史特性の比較を行い、匂いを介した情報伝達が異なる環境条件下でどのように変化するのかを調べた。
匂い曝露実験の結果、匍匐型では、同一個体由来の匂い曝露でのみ食害率の有意な減少が見られ、個体間での匂いを介した情報伝達(植物間コミュニケーション)は起こっていなかった。一方、直立型では、同一個体由来のみならず他個体由来の匂い曝露でも食害率の有意な減少が見られ、植物間コミュニケーションを行っている可能性が示唆された。
環境調査により、植食昆虫数や土壌硝酸塩濃度などが河原で高いことが分かった。このような、高い食害圧や土壌養分条件といった環境要因が匂いを介した情報伝達を促進し、直立型の匂いを介した情報伝達を植物間コミュニケーションへと発達させた可能性がある。さらに、匍匐型では葉にトライコームを有し、直立型では大型化するなど2タイプ間で生活史特性が異なっていた。以上より、匂いに対する反応は環境や生活史戦略と密接に関係している可能性が示された。