| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-218 (Poster presentation)
花粉生産や種子生産を個体レベルで分業している雌雄異株植物では、集団中の性比や雌雄株の位置関係が集団維持に強く関わる。雌雄異株植物では、しばしば性比の偏りや個体の生育場所の雌雄差が見られ、本研究の対象種であるナギ(Nageia nagi, マキ科)でも先行研究においてオスに偏った性比と雌雄の分布における空間的分離が報告されている。また、これらの成因は、雌雄の繁殖コストの差に起因する開花サイズや生存率などの性差であると考えられてきた。この解釈は、種子や未開花個体の段階では、性比に偏りがなく、雌雄個体が独立に混在していることが前提となっているが、未開花個体の雌雄判別の難しさ故に推測の域を出ない。そこで本研究では、雌雄異株植物の個体群構造の形成要因への理解を深めることを目的として、DNAマーカーを用いて未開花個体の性を判別し、先行研究のデータも用いて性比、空間分布、絶対成長量について解析を行った。その結果、開花個体では性比が有意に雄に偏っていたが、未開花個体も含めた集団の真の性比は1:1から有意に逸脱していなかった。この結果は、開花個体の性比の偏りが繁殖開始サイズの性差の影響であることを裏付け、先行研究における説明をより強固にするものであった。また、開花個体の雌雄の空間分布は有意に排他的であったのに対し、真の雌雄の空間分布は独立であった。このことから、開花個体で見られた雌雄の空間的分離は開花個体および個体の成長に伴って顕在化する可能性が示唆された。さらに、未開花個体において成長量に有意な差が見られなかったことから、成長の雌雄差は繁殖開始後に現れる可能性があると考えられる。本研究は、先行研究における前提や解釈を実際のデータで示し、雌雄異株植物の個体群構造の形成要因に対する理解を深めることができた。