| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-219 (Poster presentation)
遺伝的多様性は、集団の環境への適応を可能にする1つの重要な要因である。集団の遺伝的多様性が高いと、異なる環境にも順応できるようになり生息域を広げることができたり、環境変動や病気の蔓延が生じた場合にそれらのストレスを耐え抜く個体が現れることで絶滅を免れたりするメリットがあると考えられる。単為生殖により繁殖する生物では遺伝的多様性が生じにくいため、環境変動などにどのように対応しているのか、不明な点が多い。本研究では、日本に雌株のみ存在すると言われているフユザンショウの遺伝的多様性と地理的遺伝構造について調べ、集団維持のしくみを探ることを目的とした。東北地方から九州地方の各地でサンプリングを行い、解析には、SSR領域遺伝子座を利用した解析と、MIG-seq法によりゲノムワイドに検出された一塩基多型を利用した解析の2種類を用いた。どちらの解析方法でも、東北・関東・近畿・中国地方にかけての広い範囲に分布しているクローンが存在し、四国地方では地域ごとに異なる遺伝子型のクローンが存在していることが明らかになった。またSSR解析から、種子から取り出した胚の遺伝子型が親株と同じ遺伝子型であることが明らかになった。これらのことから、雌株が単為生殖によって種子を生産することで、日本の広域に分布するクローンや、四国で地域ごとに異なるクローンを形成している可能性が示唆された。しかし、2種類の解析方法の結果は完全には一致せず、一塩基多型を利用した解析では山口県でのみ親の遺伝子型と異なる遺伝子型が存在するという結果が得られた。山口県の個体群は、単為生殖により種子生産が行われている可能性がある一方で、雄株が存在し遺伝的交配が行われている可能性、あるいは単為生殖によって生産された種子が親と異なる遺伝子型になる仕組みが存在する可能性もある。