| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-222 (Poster presentation)
除草剤抵抗性雑草の出現は世界の食糧生産に対する重大な脅威となっているため、除草剤抵抗性の進化が起こりやすい要因を理解することは極めて重要である。オモダカは有性生殖に加えて塊茎による無性生殖も行う多年生水田雑草である。日本では東日本群と西日本群に遺伝的に分化しており、水稲作において主要な除草剤であるSU剤に対する作用点抵抗性が東日本群でのみ確認されている。除草剤の標的酵素の一アミノ酸置換によって発生する作用点抵抗性は、有性生殖に伴う突然変異によって新たな遺伝子型が生じやすい集団ほど発生しやすい可能性がある。そこで、西日本群で作用点抵抗性が確認されないのは、東日本群よりも無性生殖への依存度が高いことによるのではないかと考えた。
東日本群9系統、西日本群6系統を栽培し、繁殖特性を比較した結果、花序の分枝数および花数、総種子重、種子数の値は東日本群の方が大きかった。総塊茎重に差は認められなかったが、塊茎数は西日本群で多く、西日本群の方が無性生殖への投資が大きいことが明らかになった。さらに、野外におけるクローン構造を推定するため、全国55水田から10–20個体を採集し、MIG-seq法によってSNP情報を取得した。個体間の遺伝距離に基づきジェネットを識別し、水田集団内のジェネットの多様度を評価したところ、西日本群の方が多様度は低かった。以上より、西日本群は東日本群と比較して無性生殖への依存度が高く、このことが作用点抵抗性が確認されない要因の一つである可能性がある。また、東西群の進化的背景に関する知見を得るため、葉緑体DNAに基づく系統解析を行った。4領域(3679 bp)による全国17個体の調査では、東西群のハプロタイプ間で15箇所の変異が確認された。東西群間の境界付近50個体においても中間的なハプロタイプは認められず、両群は独立に進化してきた可能性が示唆された。