| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-223 (Poster presentation)
スギ(Cryptomeria japonica)は日本固有種で、我が国を代表する林業樹種であり、その生産性の向上は林業において重要な課題である。一方で、スギが産出する花粉は、日本人の4割を苦しめる花粉症を引き起こしている。これまでスギの育種においては、成長の速さや材の通直さ、肥大成長の良さなどの成長や材形質が注目されてきたが、雄花や球果への繁殖への資源分配が、成長に与える影響については十分な理解がない。花粉などへの繁殖分配を減らすことで、木材生産性を向上できれば、一挙両得とも言える。そこで、本研究では203系統のスギを用いて、繁殖への資源投資が樹体成長に与える影響について理解することを目的とした。
調査は茨城県日立市十王町にある林木育種センター内の、日本各地から収集したスギ精英樹等を203系統植栽した樹齢8年のコアコレクション試験地を対象に行った。着花期の2月と結実期の9月に、樹冠上部から枝を採取し、枝重量あたりの雄花重割合と、枝重量あたりの球果の重量割合を算出した。また各系統の樹高と胸高直径(DBH)の経年変化から相対成長率(RGR)を算出した。
雄花の繁殖投資比は0から0.13、球果の繁殖投資比は0から0.30であり、大きな繁殖戦略の変異を確認できた。各繁殖投資比の広義の遺伝率は0.51と0.49であり、繁殖投資量の違いは系統による遺伝的差異によって強く説明されることがわかった。雄花と球果のいずれの繁殖投資比も、RGRと負の相関があったが、後者のほうがより相関が強かった。球果は、雄花と比較して、資源投資期間が長く、バイオマス量が大きいため、成長に与える影響が大きかったと考えられる。これらの結果は、林木育種において、繁殖投資比を抑えた系統を選抜することにより、花粉症問題を軽減しつつ、成長の優れた系統の開発が実現する可能性を示唆する。