| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-225 (Poster presentation)
クローナル植物では、地下茎や匍匐茎といったクローン成長器官の伸長方向や数、長さを調節し、周囲の環境を探索しながら成長してより良い場所にラメットを配置するような挙動が知られている。地下茎は茎頂分裂組織に由来する器官でありながら土壌中を伸長し、その後に地上部を分化させる。娘ラメットを好適な場所に配置するためには、土壌環境に加えて光環境も認識して応答する必要があると考えられる。本研究では、ラメットが一年で枯死する疑似一年草植物コンロンソウCardamine leucanthaを対象に、地下茎の伸長パターンと土壌条件・光条件に対する応答メカニズムを明らかにすることを目的として、野外調査および圃場実験を行った。
野外調査では多くのラメットで地下茎が放射状に複数本伸長している様子が観察された。圃場実験では、粒度や保水性、生物性の異なる4種類の土壌を配置した区画で親ラメットを植栽し、地下茎の成長、生存および防御応答遺伝子の発現量を解析した。その結果、地下茎は全ての土壌に伸長したものの、生物性の高い土壌により多く伸長し、礫を多く含む土壌では枯死率が高かった。また、地下茎先端での防御応答遺伝子の発現は土壌条件によって変動し、局所的な環境応答が示唆された。さらに、地表面の半分を遮光シートで覆った区画で光条件への応答を評価したところ、各親ラメットの地下茎は光・遮光のいずれか一方に偏って分布する傾向がみられた。全体として遮光側に112本、光側に82本伸長しており、地下茎の本数と長さは遮光側でわずかに多かったが、枯死率も高かった。以上の結果から、コンロンソウはあらゆる方向へ地下茎を伸長するものの、その伸長量と生存率は到達した場所の土壌の物理的・生物的性質に大きく影響され、光環境への応答は限定的であることが示唆された。