| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-228  (Poster presentation)

日本の地域固有植物はどう多様化したか:落葉広葉樹林に生育する2種群の系統地理解析【A】
How Have Japan's Regional Endemic Plants Diversified? – A Phylogeographic Analysis of Two Groups in Deciduous Broadleaf Forests【A】

*髙橋弥生(お茶の水女子大学), 藤原正人(兵庫県立小野高校), 尾関雅章(長野県環境保全研究所), Su-Kil JANG(Gangneung-Wonju National Univ.), 田金秀一郎(鹿児島大学総合博), 岩崎貴也(お茶の水女子大学)
*Yayoi TAKAHASHI(Ochanomizu Univ.), Masato FUJIWARA(Ono High School), Masaaki OZEKI(Nagano Env. Cons. Res. Inst.), Su-Kil JANG(Gangneung-Wonju National Univ.), Shuichiro TAGANE(Kagoshima Univ.), Takaya IWASAKI(Ochanomizu Univ.)

日本列島は生物多様性ホットスポットの一つであり、高い生物多様性と固有性を有する。なかでも、日本海側地域やソハヤキ(西日本太平洋側)地域、フォッサマグナ地域などの一部地域にのみ生育する「地域固有植物種群」の存在が特徴的である。これらは複数の分類群で類似した分布を示すため、種分化・集団分化の要因として山脈隆起などの地史や第四紀気候変動など、共通の歴史的要因の影響が想定されてきたが、統合的に検証した例はまだ少ない。
本発表では、日本列島における地域固有植物種群の分化を検証するモデルとして、近縁グループ内に複数の地域固有種を含むスミレ科スミレサイシン類とクスノキ科クロモジ類に着目し、系統解析・系統地理解析を実施した。葉緑体全ゲノム配列を用いた化石校正による属レベルの系統解析・分岐年代推定を行い、その結果を二次校正としてゲノムワイドSNPsの解析に適用し、近縁種群内の分岐年代推定を行った。その結果、生殖隔離を伴う種レベルの分化は100万年前以前に生じた一方で、中間帯で交雑個体が検出される変種・種内集団レベルの分化は30万年前以降に生じたことが示された。各グループ内で、日本海要素(主として日本海側に分布)であるスミレサイシン・オオバクロモジと、太平洋側に分布するナガバノスミレサイシン・クロモジは、それぞれが最も新しい分岐に位置した。ニッチシフトの解析からは、日本海要素の分化に多雪環境へのニッチシフトが関与した可能性が示唆された。これらの結果から、共通の地理・気候要因が分化に影響した可能性はあるものの、類似した地理的パターンの分化であっても、分岐年代は分類群・分化階層によって大きく異なる可能性がある。加えて、先行研究で示された地域固有種・地域系統の分岐年代を分類群横断的にレビューし、日本の地域固有植物の多様化に寄与した歴史的要因について考察する。


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