| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-233 (Poster presentation)
【背景】植生帯境界の決定には構成樹種間の競争が関与している.これまでの研究で,常緑-落葉広葉樹林の植生帯境界において,常緑広葉樹による被陰が落葉広葉樹の生育を抑制していることを示唆した.しかし,定着後の種内・種間競争が成長や個体群動態に及ぼす影響とそれらが生じる空間スケールについては明らかでない.
【目的】本研究では,常緑-落葉広葉樹林境界域に位置する函南原生林において,種内・種間競争と樹木の成長量との関係,およびその空間スケール依存性を明らかにした.また,これらの標高変化を植生帯境界における植生構造の変化と関連づけて考察した.
【手法】函南原生林内の標高600,700,800 m付近に設置された3つの調査区(各1 ha)における毎木データより,各樹木個体について,近接木との競争強度の指標であるNCIを算出した.近接木は常緑広葉樹と落葉広葉樹に区分し,それぞれの指標をNCIEBおよびNCIDBとした.近接木とする樹木間距離を段階的に拡大し,胸高直径の相対成長率(RGR)とNCIの関係を回帰分析により評価した.
【結果と考察】NCIとRGRには負の関係が認められた.モデルのAICは近接木の樹木間距離の増加にともない低下し,10〜30 mでほぼ一定となり,RGRとNCIの関連はこの距離までで飽和した.一定となる距離は落葉広葉樹の下層木(DBH < 30 cm)で特に短く,落葉広葉樹が局所的な光環境に応答することを示していると考えられた.下層木におけるRGRとNCIの関連性は調査区によってほとんど変化がなく,常緑広葉樹のRGRは全ての標高の調査区でNCIEB,NCIDBの両方と負の関係を示した.落葉広葉樹のRGRとNCIDBは全ての標高の調査区で関連していたが,NCIEBとは関係が認められなかった.これらの結果は,常緑広葉樹が定着後に常緑・落葉広葉樹の両種群との競争で成長抑制を受ける一方で,落葉広葉樹は更新段階で常緑広葉樹と棲み分けており,定着後の個体群動態には種内競争が重要であることを示唆している.