| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-235 (Poster presentation)
雌雄異株は被子植物で何度も独立に進化してきたが、海洋島では雌雄異株の割合が特に高いことが知られており、その要因や進化過程が注目されている。小笠原諸島の固有種であるウチダシクロキの花には柱頭・花粉形態と結実量に二型があることが発見され、雌雄異株である可能性が示唆されていた。本研究は、ウチダシクロキの花形態や繁殖形質をさらに詳細に調べることで、雌雄性の分化がどの程度見られるのかを明らかにすることを目的とした。まず、花の観察により、柱頭が膨らみ花粉が少ないメス型と、柱頭が膨らまず粒状の花粉が多数見られるオス型という二型が見られることがわかった。詳細な花粉観察の結果、花粉が小さく少ないメス型と、花粉が大きく多いオス型の二つのグループに明確に分けられることがわかった。続いて、花器官のサイズを測定したところ、花粉数・サイズほど差が顕著でないものの、雄しべ、花弁の長さと開き具合はオス型の方が大きい傾向が見られた。さらに、人工交配を行い花粉管伸長を観察したところ、基本的にオス型の花粉をメス型の雌しべに受粉させた時のみ正常に花粉管が伸長した。これらの実験から、ウチダシクロキには花粉・柱頭の機能には明確な雌雄差が見られる一方で、形態の分化はあまり進んでおらず、雌雄異株性進化の初期段階にあることが示唆された。オス型形態をもつ個体が野生集団では結実することがあり、この事実も雌雄異株性進化の初期段階であることを支持している。今後、本州に生育する近縁種との比較研究を通して、海洋島における雌雄異株の進化過程の解明が期待される。