| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-236 (Poster presentation)
蛇紋岩土壌は、母岩の持つ特有の化学特性により植物の生育を妨げることが知られている。具体的には、Niなどの重金属やMgが過剰である一方で、Caが欠乏的である(低Ca/Mg比)といった化学特性が知られている。そのため、蛇紋岩地帯には裸地や露頭といった植生の乏しい景観が確認される。しかしながら、蛇紋岩地帯では樹木を中心とした多様な植物が、高密度に生育する森林環境も見られる。森林土壌は、母材の風化に加え、リターを通じた植物体からの有機物供給といった複雑な生成作用を受けて成り立つ。そのため、地上部生態系における動態も変化する可能性が考えられる。そこで本研究では、森林化した蛇紋岩生態系において、どの程度の蛇紋岩的影響が存在するのかを明らかにすることを目的とした。北海道むかわ町穂別の蛇紋岩林にて、2023年6月と2025年10月にそれぞれ複数種の樹木葉を採取した。また、2024年6月には下層からリターを採取し、種ごとに分画した。得られたサンプルは融解した後、原子吸光光度計にてCa、Mg濃度を測定した。これらの値を先行研究の土壌データと比較し解析を行った。本研究で測定された樹木葉のCa/Mg比は土壌の交換態Ca/Mg比に比べて高い値を示した。これは蛇紋岩地帯に生育する樹木がMgに比べ、相対的に多くのCaを利用し生育していることを示唆する。6月に採取した葉に比べ、10月に採取した葉はCa濃度が高い傾向が見られた。Caは落葉前の植物体内での再利用が行われにくい元素として知られ、落葉期にCa濃度が増加したことが考えられる。リターにおいても高いCa濃度を示したことから、Caは落葉後も長期間リター中に保持される可能性がある。樹木によるCaの選択的利用と、リター中での長期保持というプロセスを経て、蛇紋岩生態系では母岩中に少なかったCaが徐々に地上部生態系に蓄積している可能性がある。