| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-238  (Poster presentation)

クローナル植物の分業は成長を最大にする最適化戦略をとっているか【A】
Does the division of labor in clonal plants adopt an optimization strategy that maximizes growth?【A】

*江藤毬花(東北大学)
*Marika ETO(Tohoku Univ.)

植物は移動できないため、環境条件に応じて形態や機能を可塑的に変化させることで適応している。たとえば、光が十分で地下資源が乏しい環境では、不足資源を獲得するため地下部へのバイオマス投資を増やす。しかし、一部のクローナル植物では逆の現象がみられる。地下茎などを介してラメット間で資源を輸送し、特定のラメットの不足資源を別のラメットから補うことができるため(生理的統合)、各ラメットは、不足資源の獲得よりも、十分に資源が得られる器官にバイオマスを多く投資する。これを「分業」(division of labor)と呼ぶ。この戦略は、ラメット間の資源有効性が不均一であるときに、ジェネットの生産を最大化するために有利だと考えられる。一方、個々のラメットが特定の資源獲得に特化しすぎると、地下茎が分断された場合に個々のラメットの資源獲得が不利になる可能性があり、現実の植物が必ずしも最適な分業を行っているとは限らないと予想される。クローナル植物の戦略を包括的に理解するためには、どのような戦略がどのような状況で最適なのか、定量的に予測する枠組みが必要である。演者らは、地下茎で繋がった二つのラメットの土壌窒素と光環境が異なる環境で、両者の合計相対成長速度(RGR )を最大にする最適な葉重/個体重比(LMR )を求めるモデルを構築した。本講演では、土壌窒素のみ不均一な環境を想定し、一方のラメットからもう一方のラメットに送る窒素の量を変えることができる条件での最適なLMRを計算した。結果、富栄養環境のラメットから窒素が輸送される量が多いほど、送られた側のラメットの最適LMRおよびRGRは増加し、合計RGRが最大となる最適な窒素輸送割合が存在した。また、両ラメット間の栄養条件の差に応じて最適な窒素輸送割合が異なることも明らかとなった。本モデルは、土壌窒素濃度のみ不均一な環境において、クローナル植物における分業の成立条件を定量的に予測する理論的枠組みを提示した。


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