| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-239  (Poster presentation)

コウボウムギはなぜ汀線付近で内陸側よりも速く成長できるのか?〜仙台海岸での事例〜【A】
Why does Carex kobomugi grow faster near the tidal line than further inland? A case study from the Sendai coastline.【A】

*當山天地, Leanne K FAULKS, 高橋真司, 宇野裕美(東北大学)
*Tenchi TOYAMA, Leanne K FAULKS, Shinji TAKAHASHI, Hiromi UNO(Tohoku Univ.)

 砂浜海岸には、海から内陸に向かって海塩飛沫、堆砂、土壌特性などの環境勾配が存在する。そのため、海浜植物の生存や成長を制限する要因は、海陸方向で環境ストレスから競争へと変化する。日本の代表的な海浜植物のひとつであるコウボウムギは汀線付近〜内陸数十mという環境勾配の大きい範囲に生育するが、幅広い環境のなかで本種の形態や生態に違いが生じるかはよくわかっていない。本研究では、コウボウムギの汀線付近とより内陸側の生育地での成長動態および繁殖戦略の違いを観察し、堆砂深、土壌含水率、植生構造などの勾配との関係を検討した。調査は、2025年3〜8月に、仙台湾の岩沼海岸で行った。
 成長動態を追跡した結果、葉の成長速度は汀線付近で内陸側より2倍程度大きかった。また、本種はクローナル植物で、基本的に栄養繁殖で増殖するが、種子繁殖のための穂をもつラメットもよくみられる。汀線付近と内陸側で穂をもつラメットの割合を比較すると、汀線付近でその割合が著しく低かった。
 汀線付近での成長速度の大きさに関しては、調査期間中に汀線付近の生育地では5cm以上の堆砂が起こった一方で、内陸側では堆砂はなかったことから、堆砂による埋没を回避する反応であると考えられた。また、海陸方向で土壌水分の勾配はなかったが、他種の種数および密度は内陸側のほうが高かったことから、内陸側では水分をめぐる競争が起きていた可能性が考えられた。穂をもつラメットの割合が汀線付近で低かった要因として、汀線付近の高ストレスな環境では種子繁殖への資源投資を抑え、地上部の成長や栄養繁殖に資源をまわしている可能性が考えられた。
 調査地では漂着海藻が植生帯の前部まで到達しており、これが栄養供給源となり汀線付近に生育するコウボウムギの成長動態に影響する可能性も考えられた。そのため、汀線付近で海藻の除去区、内陸側で海藻の添加区を設置したが、成長動態への影響はみられなかった。


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