| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-241 (Poster presentation)
植物の生育環境の季節によって大きく変化する。特に落葉樹林下では、林冠樹木の落葉により林内に到達する光量は増加する。そのため、林床の常緑種にとって冬季は光獲得のチャンスとなりうる。一方で、冬季は低温により炭素同化の効率が下がる季節であり、光量の増加は光阻害をもたらす可能性がある。
本研究では、常緑樹の光条件の季節変動に対する適応の鍵として、葉角の調整に着目する。光の入射方向に対して垂直に葉面を向ければ受光効率は上がり、平行に近づければ光阻害回避に効果があると考えられる。常緑種稚樹の葉角は、季節を通して固定されているのか、変化するのか。そして、受光効率を上げるように調整されているのか、あるいは光阻害を回避するように調整されているのだろうか。
仙台市内の落葉樹林内に生育する常緑広葉木本植物 5 種について 2023 年9月(夏季)と 2024 年2月(冬季)に樹形データを計測し、個体直上の全天写真を撮影した。Yplant モデルを用いて植物の三次元構造を、全天写真を用いて光環境をバーチャルに再現して、受光量を解析した。光獲得効率の指標として、投影効率、展示効率を用いた。投影効率は、光源に対する投影葉面積を総葉面積で割った値であり、展示効率はこれに自己被陰の影響を含めたものである。樹形変化が夏季(または冬季)の光環境における受光効率に与える影響を見るために、各光環境条件下で夏季樹形と冬季樹形の各指標を計算し、比較した。
樹形データから、調査したすべての種で冬季と夏季では葉角が異なり、季節ごとの光環境に応じて葉角が調整されていると考えられた。シミュレーションを行ったところ、展示効率は冬季と夏季で同程度あるいは冬季に上昇した。冬季は光合成の低下に伴い展示効率を下げること予想されたが、結果は予想に反するものだった。冬季は落葉により林内の光量が増加するため、この時期に光合成生産を向上させるように葉角が調節されているのかもしれない。