| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-245 (Poster presentation)
葉の養分再吸収(養分回収)は、落葉前に葉から窒素やリンなどの養分を回収することにより、樹木が落葉による養分損失を防ぐ仕組みである。この仕組みは樹木の成長や繁殖などに有利となるため、樹木の資源利用戦略を反映する、重要な指標であるといえる。特にアジアの熱帯季節林では、乾季の乾燥ストレスや貧栄養土壌という厳しい環境下で森林が成立しているにもかかわらず、葉の養分再吸収をはじめとした、資源利用戦略に関する知見が乏しく、一貫した見解は存在しない。そこで本研究では、熱帯季節林において多様な樹種の葉の養分再吸収を明らかにし、樹木の資源利用戦略について考察することを目指した。カンボジア・シェムリアップ州に位置する、クーンリアム森林研究所に同所的に成立している落葉樹林、半常緑樹林、常緑樹林に生育する落葉樹20種102個体、常緑樹29種157個体を対象に、2023年6月および2024年7月に緑葉の採取を、2024年9月から2025年3月に落ちたばかりの新鮮な落葉を採取し、それぞれ、葉窒素濃度と葉リン濃度を測定し、窒素とリン再吸収率を算出した。個体の値を用いて落葉樹と常緑樹の緑葉および落葉の窒素・リン濃度を多重比較した結果、緑葉窒素・リン濃度と落葉窒素・リン濃度は落葉樹と常緑樹の間で差が認められなかったものの、窒素およびリンの再吸収率は、常緑樹に比べて落葉樹で有意に高くなった。このことから、カンボジア熱帯季節林において、落葉樹と常緑樹の養分再吸収の違いは緑葉の養分濃度ではなく、葉寿命などの他の要因による可能性が示唆された。また、落葉樹も常緑樹も緑葉の窒素濃度と再吸収率、および緑葉のリン濃度と再吸収率は正の相関を示した。このことは、葉の養分濃度が高く、獲得的な性質をもつ樹木は、落葉前に養分をより再吸収することで、効率的な資源利用戦略をもつことを示唆した。