| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-247 (Poster presentation)
コシアブラ(ウコギ科ウコギ属)は、北海道から九州の冷涼な山地に自生する落葉広葉樹である。春に採取される若いシュートは山菜として人気が高いが、その採取がコシアブラ個体の成長に与える影響についての知見は多くない。本研究では、実際の山菜利用を想定し、自生するコシアブラ幼木の頂芽シュートを採取することで、採取がコシアブラ幼木の成長に与える影響を明らかにすることを目的とした。本研究は、岐阜県高山市の冷温帯常緑針葉樹林サイトにおいて実施した。コシアブラ幼木 26 個体を選定し、採取区・非採取区それぞれ 13 個体に区分した。採取区では、2025 年 5 月に頂芽シュートを採取し、その後の成長動態の区間差を調査した。採取後 1 か月時点で、採取区の 54%の個体において補償反応による新たな頂芽の開葉が確認された。両区のシュート数、複葉枚数、小葉枚数を比較すると、頂芽ではいずれも非採取区で大きい値を示した一方、側芽ではいずれも採取区の方が大きい値を示した。葉面積の季節変動をみると、頂芽では採取区において非採取区に比べて増加が遅れ、葉面積の減少が確認された。個体レベルで、葉、採取シュートの乾燥重量の積算値および幹乾燥重量の増加量を両区で比較すると、いずれも採取区の方が小さかった。頂芽葉の乾燥重量が両区の差に大きく寄与していた。これらの結果から、シュート採取を受けたコシアブラ幼木では、補償反応は生じるものの、光合成器官である頂芽葉の減少と葉フェノロジーの遅れにより、個体レベルでの同化量が低下していることが考えられた。さらに、採取区において補償反応が無かった 6 個体中 3 個体が枯死したのに対し、その他の個体で枯死は確認されなかった。このことから、コシアブラの持続的な採取利用においては、補償反応が発現するのに十分な資源貯蔵量を植物体内に保持している個体を採取対象として選定することが重要であると考えられる。