| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-248 (Poster presentation)
近年,植物の根形質に基づく資源獲得戦略の種間差は,資源保持を表すconservation gradientと菌根共生への依存を表すcollaboration gradientからなる二次元軸で整理できることが示されている(Bergmann et al. 2020)。しかし,この二次元軸が種内変異においても同様に成立するかは,十分に検証されていない。特に,ブナのように外生菌根菌と共生する樹種における検討例は限られている。
本研究では,新潟県魚沼市のブナ二次林において9プロットから計60個体のブナ実生を採取し,葉・根形質および菌根形成率を測定した。これにより,①地上部・地下部形質は光環境に対して同調して変動するか,②根の機能形質と菌根形成率はどのような関係にあるか,③形質および環境要因は実生成長とどのように関連するか,の3点を検証した。
葉および根形質の主成分分析の結果,葉の第一主成分と根の第一主成分との間に有意な正の相関が認められ,種内における地上部と地下部形質の同調が示唆された。一方,根形質の主成分分析では,根直径および比根長を主に反映する形態軸とは独立した軸に菌根形成率が位置付けられた。これは,種間研究においてcollaboration gradientとして解釈されてきた根直径-比根長軸が,種内変異においては必ずしも菌根形成の程度を直接反映しない可能性を示している。さらに,菌根形成率を目的変数,林分をランダム効果としたGLMMの結果,比根長および根分岐頻度が菌根形成率に対して有意な正の,根組織密度が負の有意な関係が示され,資源獲得的な根を持つほど菌根形成率が高かった。また,成長量(乾燥重量)を目的変数としたGLMMでは,開空度が正,比根長が負の関係を示した。 光環境が良好,葉が陽葉的,比根長が低い個体ほど成長が大きかった。
以上より,光環境に応じた地上部・地下部形質の同調が認められる一方で,根形質と菌根形成との関係は種間で提唱されてきた二次元軸とは一致せず,種内レベルでは異なる資源獲得様式が存在する可能性が示唆された。