| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-250 (Poster presentation)
陸上植物は葉で光を受けて光合成を行い、炭素を固定して成長する。森林では形態の異なる樹種が共存し、とくに暗い林床では個体内での葉の配置が受光効率を左右する。一般に、受光量を高めるためには葉を大型化して展開面積を広げることが有利である。一方、大型葉は風による抗力が増大して損傷・破断リスクが高くなる。したがって受光量と力学的安全性の両立が求められるため、葉身と葉柄への投資配分も環境や葉サイズに応じて調節される。しかし力学的安全性は形態的特性だけでなく材料特性にも依存するため、形態のみからの評価には限界がある。そこで本研究では暖温帯二次林の11樹種を対象に、葉身・葉柄の形態的特徴と枝からの葉柄破断耐性の関係を、引張試験による引張強度として定量化し、投資戦略が実際の耐性としてどの程度実現されているか検証することを目的とした。形態的特徴として葉の葉柄断面積、葉柄長、葉身面積、葉身新鮮重量、葉身面積当たりの葉身乾燥質量を求めた。引張強度として葉柄基部を引張り、枝から葉が破断した時の最大荷重を測定することで引張強度を求めた。これらの指標を関連づけ、葉の投資配分と破断耐性の対応関係を解析した。その結果、引張強度は葉柄断面積および新鮮重量と正の関係を示し、値が大きい葉ほど破断耐性が高かった。種間比較では、種ごとの葉柄断面積と葉身新鮮重量の違いが破断耐性の種間差を大きく規定していた。一方、種内比較では、いずれの形態指標も破断耐性の個体間差を十分には説明しなかった。葉柄断面積と新鮮重量が破断耐性に強く相関していたことから、葉柄基部の耐性は主に支持構造へのバイオマス投資量によって規定され、とくに種間差は各樹種がもつ投資戦略を強く反映していると考えられる。一方で種内では形態指標との明瞭な関係がみられず、材料特性や接合部構造など形態以外の要因が個体差に関与している可能性がうかがえた。