| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-251  (Poster presentation)

安定同位体比を用いたキジルクム砂漠の木本種の水利用特性の塩ストレスへの応答の評価【A】
Evaluation of water-use responses to salt stress in woody species in the Kyzylkum Desert using stable carbon and oxygen isotopes【A】

*矢野功祐(三重大学), 玉村匠大(三重大学), 岩永史子(鳥取大学), 宮沢良行(琉球大学), Kristina TODERICH(Mie Univ.), 松尾奈緒子(三重大学)
*Kosuke YANO(Mie Univ.), Shota TAMAMURA(Mie Univ.), Fumiko IWANAGA(Tottori Univ.), Yoshiyuki MIYAZAWA(Univ. of the Ryukyus), Kristina TODERICH(Mie Univ.), Naoko MATSUO(Mie Univ.)

ウズベキスタン中央部に位置するキジルクム砂漠は,気候変動や水利用増大による乾燥化に伴う土壌塩類集積や土地利用変化に伴う植生被覆の劣化が報告されている.この地域ではタマリスクなどの塩生木本植物が緑化材料として広く利用されているが,近年,タマリスク群落の衰退が報告されており,タマリスクの乾燥ストレスや塩分ストレスに対する応答の理解が求められている.そこで本研究では,キジルクム砂漠南東部に設けた13×11km調査区内の土壌塩分条件の異なる9地点において,地下水を主な吸水源とすることが確認されているタマリスク(Tamarix hispida)50個体を対象とし,C3植物において気孔コンダクタンスに対する光合成速度の比である内的水利用効率を反映する葉の有機物の炭素安定同位体比(δ13C)を測定した.さらに,葉の有機物と枝内水の酸素安定同位体比(δ18O)を測定し,両者の差から蒸散特性を反映するとされる葉の酸素同位体濃縮(Δ18O)を算出した.これらの値と各地点における深度0-100cmの土壌抽出水の電気伝導度(EC)の平均値,地下水のECとの関係を調べた結果,タマリスクの葉のδ13Cは浅層土壌抽出水のECとの間に正の相関を示した一方,地下水のECとの間には相関がみられなかった.この結果から,本調査地におけるタマリスクは主に地下水を利用しつつも,時期に応じて浅層土壌水を併用しており,浅層土壌中の塩分の影響によって気孔コンダクタンスが低下し,内的水利用効率を上昇させていると考えられた.一方,この気孔の応答が葉のΔ18Oには反映されていなかったことから,タマリスクの葉のΔ18Oの決定には蒸散特性よりも,塩腺から排出した塩の吸着水由来の水や滞留時間が長く蒸発の影響をより受けた組織内貯留水などの方がより大きく寄与している可能性が示唆された.


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