| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-254  (Poster presentation)

葉温は反射分光法による葉形質推定に影響を及ぼすのか?【A】
Does leaf temperature influence the prediction of leaf traits using reflectance spectroscopy?【A】

*柴田敏宗(九州大学), 久保田滋裕(九州大学), 安武大輔(九州大学), 広田知良(九州大学), 横山岳(九州大学, チャップマン大学)
*Toshimune SHIBATA(Kyushu Univ.), Shigehiro KUBOTA(Kyushu Univ.), Daisuke YASUTAKE(Kyushu Univ.), Tomoyoshi HIROTA(Kyushu Univ.), Gaku YOKOYAMA(Kyushu Univ., Chapman Univ.)

 迅速かつ非破壊的な葉形質推定法として反射分光法が注目されている。反射分光法は、主に葉内の化学物質による光吸収に基づいて、分光反射率から葉形質を推定する手法である。前述の光吸収は、葉内の水やタンパク質に含まれるOH結合やNH結合の振動に起因するが、これらの分子振動は温度によって変化することが知られている。したがって、葉温が分光反射率、ひいては反射分光法による葉形質推定に影響を及ぼす可能性が考えられる。そこで本研究では、葉のタンパク質含量と関連する単位葉面積当たりの葉の乾物重LMA、および単位葉面積当たりの葉の水分量を表すEWTを対象として、葉温が反射分光法によるLMAおよびEWT推定に及ぼす影響を調査した。  
 実験には、イヌビワ(Ficus erecta, n = 248)およびタブノキ(Machilus thunbergii, n = 200)を用いた。各植物種の同一葉について、葉温20°Cおよび35°Cでの分光反射率を測定し、各温度での分光反射率から、部分最小二乗回帰PLSRモデルによってLMAおよびEWTを推定した。訓練・テストデータに同一葉温での分光反射率を用いた場合の二乗平均平方根誤差RMSEsameと、訓練・テストデータで異なる葉温での分光反射率を用いた場合の二乗平均平方根誤差RMSEdifを用いて、RMSEtemp = 100×(RMSEdif − RMSEsame) / RMSEsameにより、葉温が反射分光法によるLMAおよびEWT推定に及ぼす影響を評価した。
 その結果、両植物種ともに葉温によって750~1050 nm、および1440、1930 nmの波長域における分光反射率が±3%程度変化した。これらの波長域での反射率はOH結合やNH結合の振動による光吸収に基づくため、葉温によるOH、NH振動の変化が葉の分光反射率に反映されていることが示唆された。各推定においてRMSEtempは−8.7~19.2%の値を示し、葉温の変化がPLSRモデルの推定誤差を最大19.2%増加させうることが示唆された。ゆえに、葉温は分光反射率に影響を及ぼし、部分的に反射分光法によるLMA、EWT推定にも影響を及ぼす可能性が示された。


日本生態学会