| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-255  (Poster presentation)

常緑樹および落葉樹における光合成と葉肉コンダクタンスの緯度間比較【A】
Latitudinal Comparison of Photosynthesis and Mesophyll Conductance in Evergreen and Deciduous Trees【A】

*須原健仁(京大・森林生態), 砂山星也(京大・熱林), 小野田雄介(京大・森林生態)
*Kento SUHARA(Kyoto Univ., Forest Ecology), Seiya SUNAYAMA(Kyoto Univ., Tropical Forest), Yusuke ONODA(Kyoto Univ., Forest Ecology)

 生育気温は植物の葉形質を規定する重要な環境要因であり、年平均気温の低下とともに落葉樹の葉はより薄く柔らかくなる一方で、常緑樹の葉はより厚く頑丈になることが知られている。一方で、葉の炭素安定同位体比(δ¹³C)は常緑樹、落葉樹ともに年平均気温が低いほど、一貫して高くなることが報告されており、これは生育気温が低いほど葉緑体内CO₂濃度(Cc)が低下することが示唆される。しかし、このような葉形質の分化と収斂を統一的に説明した研究はない。葉肉コンダクタンス(gm)は葉緑体内へのCO₂の供給を制限する重要な要因の一つであり、葉の解剖学的形質に強く依存することが知られている。本研究では、gmに注目してδ13Cの収斂メカニズムを解明し、生育気温に沿った葉形質の分化と収斂を統一的に説明することを目指す。
 緯度勾配に沿った日本の天然林において、優占樹種を中心に林冠葉の光合成を測定し、Ccやgmを含むガス交換特性を推定した。さらに、LMA、葉の厚さ、葉面積あたりの窒素量Narea、δ13C、細胞間隙に面する葉緑体表面積(Sc)、そして細胞壁の厚さの代理指標として葉重あたりの細胞壁量を測定し、常緑樹と落葉樹に分けてδ13Cの収斂メカニズムを検証した。
 両機能型で生育気温の低下に伴うCcの低下は、gmの低下によるCO2供給の制約に起因することが示唆された。一方で、gmの規定メカニズムは機能型間で異なっていた。常緑樹では、生育気温が低いほど細胞壁量が増加し、これによりgmが低下していた。これは、低温地域での高い耐凍性のために葉が頑丈になり、CO2供給の制約を強めていることを示している。一方で、落葉樹では、生育気温が低いほど葉が薄くなり、Scが低下していた。ただし、Scの変動はgmの変化に有意に寄与していなかった。解剖学的あるいは生理学的なメカニズムが、複合的にCO2供給を制約し、葉緑体内のCO2濃度の低下に寄与している可能性がある。


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