| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-263 (Poster presentation)
地球環境が人間活動により大きく変動する中、植物の光合成速度が気温の変動によってどのように変化するかを知ることは重要性を増している。光合成速度の温度依存性は、生息地の気温が異なる種間で異なる。一方で、同じ種であっても異なる気温に順化する。そのため、順化の影響を排除した種間差を見るためには、異なる環境に生育している複数の種を同じ環境で生育して比較する必要がある。大阪公立大学附属植物園は異なる由来地からの樹木が長年生育されている樹林型展示があり、種間比較に最適である。特に、常緑樹と落葉樹の間に分布域や生存戦略の違いがあり、光合成温度依存性が異なる傾向が表れると考えた。そのため、同じ科あるいは目で常緑樹と落葉樹の種間比較が行える研究対象としてブナ科の17種、ヤマモモ科1種、カバノキ科2種、モクセイ科6種を選定した。光合成温度依存性とその温度順化能力がどのように異なるのかを調べるため、2024年6月と9月および2025年6~7月と9月に20、25、30、35℃の光合成電子伝達速度を測定した。また、葉の厚さ、LMA、クロロフィル量(SPAD値)、葉内窒素含量を測定した。多くの種で、6月から9月にかけて光合成の最適温度が高温側に移動した。上昇する気温に合わせて、その温度での光合成速度を高めた適応的応答である。この順化能力は、常緑樹では北限と南限の中央値の緯度が高いほど大きい傾向があり、一方で落葉樹では緯度が低いほど有意に大きかった。この要因として、大阪公立大学附属植物園に近い緯度の種ほど順化能力が高い可能性があり、常緑樹種と落葉樹種の緯度がおおよそ植物園の南北に分かれていたことが考えられる。また、常緑樹で、葉の厚さ、LMA、葉内窒素含量の順化能力と35℃の電子伝達速度の順化能力に有意な相関がみられたことから、これらの形質が電子伝達速度の順化能力の種間差の要因の一つと考えられる。