| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-264  (Poster presentation)

二形性を示すシダ植物3種における胞子葉及び栄養葉の光合成電子伝達能力の季節変化【A】
Seasonal Changes in Photosynthetic Activity of Fertile and Sterile Leaves in Three Dimorphic Fern Species【A】

*澤田大和(京都大学), 檀浦正子(京都大学), 小口理一(大阪公立大学)
*Yamato SAWADA(Kyoto University), Masako DANNOURA(Kyoto University), Riichi OGUTI(Osaka Metropolitan University)

シダ植物の葉は、胞子を生産して繁殖を担う胞子葉と、胞子を生産せず光合成のみを担う栄養葉に区別される。これらの間には形態的差異(二形性)が見られる場合があり、この差異は胞子生産・散布の最適化に起因すると考えられ、二形性を示す種では、胞子葉の光合成能力は栄養葉より低いと報告されている。しかし、胞子葉と栄養葉の光合成能力の違いを葉のフェノロジーや季節性を考慮して比較した研究は十分に行われていない。
本研究では、二形性の程度が異なるシダ植物3種(トラノオシダ Asplenium incisum、イノモトソウ Pteris multifida、シシガシラ Blechnum niponicum)を対象に、胞子葉および栄養葉のクロロフィル蛍光による光合成特性とフェノロジーを測定し、二形性を示すシダ植物の胞子生産が光合成能力に与える影響を検証した。対象個体の全葉に標識を付け、2週間ごとに展葉および枯死を記録した。1月に一度、胞子葉および栄養葉のクロロフィル蛍光をPAM法により測定し、最大電子伝達速度(ETRm)を算出した。

フェノロジーの観察の結果、イノモトソウおよびトラノオシダでは春に胞子葉が先行して展葉し、その後栄養葉が展葉した。胞子葉の展葉は6月頃に停止したのに対し、栄養葉は11月頃まで継続した。トラノオシダでは秋にも胞子葉の展葉が少数確認された。一方、シシガシラでは栄養葉が春に一斉に展葉し、その後胞子葉が6月頃までに展葉した。枯死はすべての種で夏から秋に多く観察された。
光合成電子伝達速度(ETRm)の季節変化を比較した結果、トラノオシダおよびシシガシラでは胞子葉のETRmが栄養葉より高い傾向が見られたのに対し、イノモトソウでは胞子葉のETRmが低い傾向を示した。
以上の結果から、シダ植物の二形性と光合成活性の関係は単純な繁殖と光合成のトレードオフでは説明できず、種ごとの資源分配戦略を反映している可能性が示唆された。


日本生態学会