| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-268 (Poster presentation)
都市樹木は、被陰による冷却効果やCO2の捕捉・吸収などにより都市環境を改善する重要な役割を担っている。しかし、多くの都市樹木は舗装下に植栽されている。舗装による土壌温度の上昇や水分浸透の減少は、樹木の生理的機能の低下を招く可能性がある。高い水浸透性を有する透水性舗装による不透水性舗装の代替は、舗装による樹木への悪影響を緩和することが期待できるが、透水性舗装と不透水性舗装が樹木の生理的機能にどのような違いをもたらすかについてはほとんど研究されていないのが現状である。そこで本研究では、舗装の水浸透性の違いが樹木の光合成機能と成長に与える影響を解明することを目的として、透水性舗装と不透水性舗装による舗装処理実験を行った。
常緑高木街路樹として全国的に広く植栽されているクスノキ(Cinnamomum camphora)を対象とし、舗装処理を行わないコントロール区、透水性舗装区、不透水性舗装区を設定し、屋外で5ヶ月間栽培した。栽培期間中、光合成機能としてガス交換測定とクロロフィル蛍光測定、成長評価として樹高、葉数、幹直径の測定を毎月行った。また、葉の形質としてSPAD値を毎月測定し、最終測定月には葉の厚さの指標となるLMAの測定、炭素安定同位体比の測定を行った。
実験期間全体での土壌含水率は、透水性舗装区が他区と比較して約20%高かった。光合成機能については、実験期間全体における舗装による影響はみられなかったが、8月には両舗装区で光合成速度および気孔コンダクタンスの有意な低下がみられた。一方、透水性舗装区では7月に気孔コンダクタンスの有意な増加と、実験期間全体を通した幹直径の有意な増加がみられた。以上より、舗装は夏場の高温による一時的な光合成機能の低下をもたらす一方で、透水性舗装はその高い保水性によって、顕著な高温ストレスを受けていない時期における葉のガス交換と、長期的な幹の成長を促進する可能性が示唆された。