| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-269 (Poster presentation)
都市樹木は被陰による冷却効果やCO2の捕捉・吸収を通じて都市環境の改善に貢献する重要な存在である。しかし、都市部では夜間照明による人工光が自然な光周期を変化させ、樹木の概日リズムや生理機能、成長に影響を及ぼす可能性が指摘されている。近年、街路灯は白色LED照明への転換が進んでいるが、その影響に関する知見は十分ではない。白色LEDと従来広く使用されてきたナトリウムランプはスペクトル特性が大きく異なることから、樹木への作用にも差が生じると考えられる。そこで、本研究は街路灯のスペクトルの違いに注目し、白色LED照明およびナトリウムランプが 街路樹の光合成機能と成長に与える影響の違いを明らかにすることを目的とした。
本研究では常緑高木街路樹であるクスノキを用い、自然日長の対照区、LED処理区、ナトリウムランプ処理区を設け、温室内で5か月間栽培した。期間中、ガス交換測定およびクロロフィル蛍光測定により光合成機能を評価するとともに、樹高、葉数、幹直径、分枝数を毎月測定した。さらにSPAD値を毎月測定した。
その結果、光合成に関連するパラメータは両照明処理区で対照区より低下した一方、照明処理区間に有意な差は認められなかった。樹高や分枝数、葉数は白色LED処理区で高い値を示す月が多く、成長促進効果が確認されたが、ナトリウムランプ処理区では顕著な増加はみられなかった。SPAD値はナトリウムランプ処理区で低下し、LED処理区は対照区と同程度で推移した。以上より、夜間照明は暗期の消失によって概日リズムを乱し、昼間の光合成機能を抑制したと考えられる。一方、青色光を含む白色LEDは形態形成に関わる光受容系を刺激し成長を促進した可能性が示唆された。結論として、光合成機能は、2つの照明処理区で同程度低下した一方、形態形成には光質の違いが反映された。特に白色LEDに多く含まれる青色光が形態形成に強く関与したと考えられる。