| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-272 (Poster presentation)
生息地の喪失に伴う断片化と孤立化は、個体群の縮小や絶滅リスクを増大させ、生物多様性と生態系機能を著しく損なう主要因となっている。生息地の孤立化はポリネーターの移動を制限して植物との相互作用を阻害し、餌資源の不安定化を通じて送粉者の多様性をさらに低下させるという悪循環を生む。都市化は生息地の断片化、孤立化等を通し一般に負の影響をもたらすとされるが、近年の研究において、都市特有の安定した花の存在がポリネーターの餌資源として機能し、ポリネーターの多様性や受粉効率を向上させる可能性が示唆されている。実際、都市化が進んだ地において絶滅危惧植物種が生育していることはしばしば報告されており、都市部が安定した餌資源の提供を通じてポリネーターを支え、孤立生態系における植物群集の維持に寄与している可能性を示している。本研究は、絶滅危惧植物が生育する孤立生態系である高木道河畔林内および周辺市街地における植物の開花フェノロジーをモニタリングすることを通し、都市が餌資源の供給源として孤立生態系を補完する役割を果たしているかを検証することを目的とした。高木道正山河畔林内とその周辺の都市景観で開花している植物を13週に渡り継続的に調査し、高木道内に生育する絶滅危惧植物を筒型、ラッパ型、皿型の3つの形質に分類し、周辺の都市景観に生育する同等の形質を持つ植物の豊富さおよび開花のタイミングを検討した。結果として、筒型、ラッパ型の植物は都市景観内の植物が開花のタイミングを補完している可能性が示唆された。一方で、皿型の植物は高木道、都市景観いずれにおいても基本的に常時確認された。開花タイミングを補完しているという状況は、都市生態系が孤立生態系に対して単に負の影響だけを与える訳ではなく、状況によってはポリネーターを支える餌資源の補完的な役割を持つ可能性が示された。