| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-273  (Poster presentation)

バイオチャーを施用した落葉広葉樹林における3年間の細根動態の定量的解析【A】
Quantitative analysis of fine root dynamics for three years in a deciduous broadleaf forest with biochar application【A】

*簗瀨久志, 吉竹晋平(早稲田大学)
*Hisashi YANASE, Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.)

 地球温暖化緩和策として、土壌へのバイオチャー施用が注目されている。バイオチャーは土壌肥沃度の向上を通じて植物成長を促進し、間接的に炭素隔離を高める効果をもつが、森林生態系、特に地下部である細根動態への影響は未解明な点が多い。細根動態(生産・枯死など)は土壌の養分状態に応じて変化し、さらに森林生態系の炭素貯蔵に大きく関わっていることも知られている。本研究では、森林土壌へのバイオチャー施用が樹木細根動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。また、その変化メカニズムとして土壌窒素濃度に着目した。
 暖温帯コナラ林に無施用区とバイオチャー施用区(10 t/ha)を設定し、施用後2~4年目の細根生産率、枯死率およびターンオーバータイム(TT)を土壌断面画像から定量的に解析した。さらに、同調査地土壌を用いたコナラ苗木のポット実験を1年間行い、バイオチャーおよび無機態窒素の添加が細根動態に及ぼす影響を検証した。画像解析には、AIソフトによる自動トレースと手動補正を組み合わせたハイブリッド法を用いた。
 森林林床へのバイオチャー施用では、実験期間全体の細根動態に対する顕著な影響は見られなかった。しかし、バイオチャー施用後2年目の春から夏において、本来は増加するはずの生産率を抑制する傾向と枯死率を増加させる効果が確認された。この変化はバイオチャー施用による土壌リン濃度の上昇を介した細根の探索性低下が関与している可能性が考えられた。一方、ポット実験では細根動態に処理間差は認められなかったが、これは本実験系での低い無機態窒素濃度や安定した含水条件が影響したと考えられた。以上より、森林へのバイオチャー施用が樹木細根動態に及ぼす影響は小さいが、施用後の経過時間や季節により細根の探索性が低下する可能性が示唆された。また、この変化には土壌リン濃度の上昇などが関与している可能性があり今後検証が必要である。


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