| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-274 (Poster presentation)
気候変動の将来予測には緻密な陸域生態系モデルが組み込まれた地球システムモデル(Earth System Model: ESM)が用いられている。この中の,特に森林の光合成能力の評価に伴う不確実性が,大気中CO2濃度に影響を与え,ひいては地上気温の予測に影響を与えている。この光合成能力を表す最重要パラメータが,25℃におけるルビスコ最大カルボキシル化速度(Vcmax25)であり,ESMの将来予測の成否を左右する。Vcmax25は個葉ガス交換測定による純光合成速度(A)と細胞内間隙CO2濃度(Ci)の関係(ACiカーブ)から,Farquhar et al.(1980)の生物化学モデルを基に推定される。多点でACiカーブを測定し,Vcmax25推定を行う標準的な測定(以下Standard ACi)は精度が高いが,測定に長時間を要するため,大量のデータ収集が困難である。一方,1点のA-Ci関係で推定するOne-Point Method(OPM)は迅速だが,未だ正確性に疑問が残る。
そこで本研究ではTRYのデータや現地観測データを用いて,ACiカーブ測定を迅速化し大量のVcmax25を推定することを目指し(1)Standard ACiの精度を保ちながらOPMに向けてA-Ci関係測定点をどこまで減らすことができるのか,を検討した。さらに(2)近年の測定機器の進展により開発されたRapid ACi Response(RACiR)を(1)で得られた結果と比較し実用性を検討した。
(1)A-Ci関係の組み合わせ次第では,少なくとも3点のA-Ci関係の測定することでStandard ACiと同等のVcmax25推定ができる可能性が示唆された。また,4点以上になるとその精度が飽和した。(2)RACiRを用いることで,OPMと同等の速度でより精度の良いVcmax25推定が出来ることが示唆された。本研究ではこれらの精度向上について,気孔コンダクタンス・葉温の観点から考察を行った。