| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-279 (Poster presentation)
生物由来の有機物を低酸素下で炭化したバイオチャーは、森林に施用すると土壌環境を改良し、樹木の炭素固定能を向上させることで大気中のCO2を減少させると言われている。しかしバイオチャーの影響を直接受ける地下部と、その影響を間接的に受ける地上部の双方を関連付けた知見が無い。そこで本研究では、樹木での炭素固定を担う光合成と、土壌改良効果に直結する栄養塩吸収が、バイオチャー施用に対してどのように応答するかを解明した。
森林土壌を充填したポットにコナラの1年生苗木を移植し、6月~12月に野外で栽培した。バイオチャーの施用量は非施用区(C0)、10 t ha-1の適量施用区(C10)、20 t ha-1の過剰施用区(C20)とした。光合成の活性(Amax、Vcmax、Jmax、gc)と葉の形態(葉の厚さ)、栄養塩吸収の活性(NO3-、NH4+、PO43-の吸収速度)と根の形態(総表面積、分岐数、比根長など)を測定した。また、土壌の物理化学性も測定した。
夏季(7月~9月)において、AmaxがC10のみ有意に増加した。これはVcmax、Jmax、gcといった葉の活性が上がったことが寄与したと考えられる。一方で葉の厚みもC10で増加していたがAmaxとの相関関係はなく、葉の形態は光合成能の向上には直接関与していないことが示唆された。根の吸収能はC10でNO3-、NH4+、PO43-すべてにおいて増加傾向がみられた。これは土壌中の栄養塩の増加によるものだと考えられる。根の形態的な変化はC0とC10の間で見られなかった。以上より森林へのバイオチャーの適量施用は、樹木の葉や根において、形態よりも活性に影響を与えることが明らかになった。そのメカニズムとしては、バイオチャーの土壌改良効果によって土壌中の栄養塩濃度が増加し、根の吸収能が向上、それに伴い光合成能が増加したと考えられる。